尿路結石の内視鏡手術
尿路結石の内視鏡手術
当院では結石治療にかかわる内視鏡機器を各種取り揃えています。腎結石から膀胱尿道結石まで、すべての尿路結石に関して、結石の位置や大きさによって手術法を選択し対応しています。体外衝撃波の結石破砕は現在行っておらず、昭和大学病院または近隣施設をご紹介いたします。
基本的には尿路結石症診療ガイドラインにしたがった治療を行います。治療は大きく、薬の服用と生活指導による保存的治療と、手術による積極的治療に分かれます。積極的治療の内容は、基本的に結石の大きさと部位によって決められますが、それぞれ利点・欠点をもった治療手技がまたがって存在しており、手技については担当医とよく相談してください。
保存的治療
結石の大きさが10mm以下の結石は自然排石が期待できるとされているので、まずは保存的治療をします。このサイズの尿管結石は約70%が保存的治療で自然排石するとされています。しかし、サイズはあくまで目安であり、実際には、長径7-8mm、短径5-6mm以上のものは自然排石しにくいようです。また、結石のサイズが小さめでも他の要因によって積極的治療に移行することがあります。
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1日2L以上の水分摂取(利尿効果による排石促進を期待)。
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縄跳び、階段昇降などの適度な運動(重力運動による排石促進を期待)。
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薬は尿管の攣縮抑制、利尿作用のあるものを服用します。ただし、これらは排石促進効果を期待したもので、結石を直接的に溶かす作用はありません。痛みの発作には、内服の鎮痛剤の他に、頓用で座薬の鎮痛薬を使用します。
積極的治療
結石が保存的治療の適応サイズより大きい場合や、他の原因で自然排石が期待できないものが積極的治療の適応です。例えば
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3~4ケ月の保存的治療で排石しない尿管結石
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尿管結石の同じ場所への長期の詰まり
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緊急処置の必要な結石の合併症が発生した場合
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抗生物質のきかない著しい尿路感染症が合併した場合
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結石によって腎機能が悪化した場合
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痛みの発作で社会生活に影響が出る、職業上(パイロットなど)早めの結石除去が望ましい場合
などです。
手術の種類
結石手術には以下のようなものがあります。
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体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
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経尿道的尿管砕石術(TUL、f-TUL)
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経皮的腎砕石術(PNL)
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経尿道的膀胱砕石術
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開放手術(ほとんど行いません)
1~3についてご説明します。
結石を衝撃波で
破砕します。(ESWL)
尿管結石は尿道から
長く細い内視鏡を挿入し
レーザーで破砕します。(TUL)
大きな腎結石は
腎瘻から内視鏡を挿入し
砕石器で破砕します。(PNL)
※当院では行っていません。
1;体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
上部の尿路結石のかたに、負担の少ない治療としてよく行われ外来での治療が可能です。レントゲン透視または超音波を使って結石を観察しながら衝撃波(音波の一種)を結石に集中させて砕きます。人体と結石の音響インピーダンスの差を利用しています。
原則的に腎・尿管結石のすべてが適応になりえますが、腎臓の結石の場合には1~2cm、尿管結石の場合は5mm以上が良い適応です。5mm未満の尿管結石でも社会的適応で行うこともあります。
響くような痛みを伴うため、手術中は点滴で痛み止めを使います。痛みの感じ方には個人差があります。外来通院で行い、治療時間は約1~2時間、結石の破砕が容易に終われば早く終了します。しかし、結石が硬い場合には期待通りには結石が割れないことがあります。また、結石にあくまでヒビを入れて割るのみで、取り除く治療ではありません。そのため、ヒビが入った結石は、その後は自然排石を期待するので、治療後も痛みの発作がくることはあります。
手術による合併症は血尿や皮下出血が多いですが、通常は自然に軽快します。頻度は少ないですが、腎臓の周囲に血腫を生じ、まれに輸血を要することもあります。大きな結石に破砕を行った場合には、割れた結石のかけらが多量で尿管に連なって大きな詰まりを起こすことがあります(ストーンストリートとよばれています)。この場合、一時的に尿管ステントを留置する処置などが必要になり、その後は再度体外衝撃波を行ったり、内視鏡手術をすることになることがあります。
日本では、侵襲の小さい体外衝撃波の治療が欧米に比べて多く行われています。しかし、結石が治療によりなくなるかどうか、ということに重点を置くと、必ずしも理想的な治療かどうか議論のあるところです。内視鏡手術の技術向上は著しく、日本でも施設によっては後述する内視鏡手術を中心に行っています。当院では、体外衝撃波をご希望の場合には関連の昭和大学病院または近隣施設をご紹介しています。
体外衝撃波結石破砕機器(Dornier社製)
2;経尿道的尿管砕石術(TUL, f-TUL)
内視鏡手術で、全身麻酔でおこなっています。尿道から細くて長い尿管鏡という内視鏡を使って、尿管内へアプローチし、レーザーやリソクラストという砕石器を使って結石をテレビモニターで見ながら砕きます。砕いた結石はバスケットなどの器具で取り除きます。内視鏡には鉄製のもの(硬性尿管鏡といいます)と、ファイバー製(軟性尿管鏡といいます)のものがあり、軟性尿管鏡は先端が大きく曲がるので腎臓の中の結石の治療もおこなうことができます。
当院では、5-6日の入院となります。
軟性尿管鏡(Olympus社製)(左)と硬性尿管鏡(Wolf社製製)(右)。
軟性尿管鏡でレーザーで結石を砕いたあと、バスケットで結石を取り除いています。
内視鏡先端から出たバスケットが結石を把持する様子(右)。
軟性尿管鏡で腎臓の中の結石を砕いています。高画質化されているので、内視鏡は細くても良い視野が得られるようになりました(左)。
レーザー本体(Boston社製)(右)。
3;経皮的腎砕石術(PNL)
腎臓の中の大きな結石に対して、腎瘻という背中から直接腎臓に到達する通り道を作り、そのボールペンの太さ程度の小さな穴から内視鏡を腎臓内に入れて、テレビモニターを見ながら結石を割り、摘出します。全身麻酔で行います。腎瘻を作ることにより出血しやすく、大きな合併症が起こることもまれにありますが、大きな腎結石には体外衝撃波治療では限界があり、有効な治療法です。適応は腎臓の部屋の形になってしまったようなサンゴ状の結石や、20mm以上の腎結石、複数の腎結石に行っています。手術時間は1〜2時間程度で、手術終了時には腎臓にカテーテルを留置する事が多く、これを約3〜7日後に抜去するので、入院期間は約7〜10日ほど必要になります。
PNLの様子。腎臓の部屋にはまった大きな結石(40mm)をリソクラストを使用して砕き、鉗子で摘出しています。
腎臓用の内視鏡(硬性腎盂鏡(Storz社製)(左)とリソクラストのという砕石器です(EMS社製)(右)。
当院では、腎臓、尿管結石のPNL手術およびTUL手術を数多く経験しております。
ご希望のかたは、担当医によくご相談ください。