top of page
3.png

前立腺がん放射線治療のハイドロゲルスペーサ留置(SpaceOAR)

SpaceOAR・ハイドロゲルスペーサとは?

1

当院では、前立腺がんへの放射線治療を行う際に、放射線の直腸への影響を低減する目的で行う 『直腸周囲ハイドロゲルスペーサ・SpaceOAR』の留置を行っています。

P-33.jpg

SpaceOAR Systemの製品キットです。

放射線治療は、前立腺がんに対する根治治療のひとつとして定着しており、外部照射(IMRTなど)、密封小線源治療(シード治療)など様々な方法があります。
放射線治療を行う際の主な有害事象(副作用)の一つに、直腸への影響(直腸有害事象)があります。これは、放射線で前立腺のみ治療したいものの、隣接する臓器にもある程度の放射線がかかってしまうことにより発生します。


機器や技術の進歩で、前立腺にできるだけ放射線を集中させることは可能になりましたが、依然、直腸有害事象は一定頻度で発生します。その多くは、程度の軽い直腸出血や肛門痛といったものです。しかし、頻度は低いものの、時に放射線照射から時間が経って発生する、直腸と前立腺の間に瘻孔ができてしまうような重篤なことも発生します。


放射線の影響は、距離が離れれば低減します。通常、前立腺と直腸は完全に隣接しているため、前述したように前立腺への放射線治療で直腸は影響を受けやすい状況ですが、前立腺と直腸の間にゲル状の物質を挿入し、前立腺と直腸の間を1~1.5cm程度離すことで直腸被曝を低減させる処置が、『ハイドロゲル直腸周囲スペーサ・SpaceOAR』留置です。

sapceOAR.png
zoom.png

前立腺と直腸の間にスペーサを介在させ、直腸前面に高い線量がかからないようにします。

このゲルの物質は、前立腺と直腸の間に留置されると放射線治療中(約3カ月間)はその形態を保ち、その後吸収され消失します。

zoom.png
P-34.jpg

留置されたスペーサは3カ月程度形態が保たれ、その後吸収され消失します。

ゲルの材質は、主にポリエチレングリコールというもので、脳外科などでも同じ成分の別製品が使用されており、過敏性や刺激性のないことが臨床試験で証明されています。
ゲルは液体の状態で針を通して前立腺後面に注入され、塩緩衝液と混ざることで速やかに固まります。 SpaceOARがゲル化する様子は動画でご覧いただけます

​実際の留置手技

2


どのような放射線治療を行う予定か、によって麻酔法やスペーサの挿入時期が異なります。
外部照射を行う予定のかたは、外部照射前開始より前に、局所麻酔でスペーサ留置を行います。局所麻酔下の施術も、痛みの程度は軽度で行えています。 密封小線源治療を受ける方は、小線源治療と同時に行っています。小線源治療は全身麻酔で行っており、小線源治療の直後に連続してスペーサ留置を行うので痛みはありません。小線源治療でスペーサ留置を小線源留置の後に行うのは、スペーサ留置を先に行うと超音波画像で小線源の視認性が悪くなるからです。


手術台で載石位(開脚した体位)になり、ステッパという器具に固定された超音波プローブを肛門から直腸へ挿入します。前立腺を観察したのち、肛門の約2cm上部の皮膚から針を穿刺します。 針を前立腺と直腸間の間隙に進めたら、生理食塩水を少量注入して空間を作成し、 その後ハイドロゲルスペーサ・SpaceOARを10c.c.ほど注入します。注入されたスペーサは速やかに体内でゲル化します。手術時間は5-10分程度です。 SpaceOAR留置の様子は動画でご覧いただけます


スペーサ注入の副作用としては、会陰部の痛みや不快感、血尿、血便、感染、アレルギーなどが報告されていますが、ごく軽度なものを含めて発生頻度は10%以下とされています。 当院ではこれまでに約450例(2022年7月末現在)のスペーサ留置を行いましたが、発熱・疼痛を認めたかたが1例のみであり、安全性の高い手技と考えています。 また、このスペーサ留置手技は2018年6月から保険適用になりました。


この手技に関する詳細・ご質問は、いつでも担当医にお尋ねください。
当科医師は、Boston Scientific Corporationから施行医認定を受けています。

P-35.jpg
認定医.jpg
image.png

​監修者プロフィール

副院長・診療科長・准教授

森田 將

​もりた まさし

bottom of page