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前立腺肥大症の経尿道的水蒸気治療(WAVE治療・Rezum)について

Rezum(レジューム)という機器を使用する経尿道的水蒸気治療(WAVE治療)は、2022年9月から本邦で行えるようになった(保険適用です)体に負担の少ない新しい前立腺肥大症の内視鏡手術です。当院では2022年10月より開始し、現在までに52例行いました(2023年10月末)。以下、この経尿道的水蒸気治療(WAVE治療)について解説します。

前立腺肥大症の経尿道的水蒸気治療(WAVE治療・Rezum)とは

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Rezum(レジューム)という機器を使用する経尿道的水蒸気治療(WAVE治療)は、2022年9月から本邦で行えるようになった(保険適用です)体に負担の少ない新しい前立腺肥大症の内視鏡手術です。水蒸気を利用して肥大した前立腺組織を壊死・退縮させますが、術後5年経過時点においても効果は安定しており再手術率は低く(4~5%)、また従来の手術に比べて性機能が維持されることが示されています。

治療時間は平均10分以内程度と短く、当院では負担の少ない静脈麻酔のため1~2泊の入院で行っています。

治療効果は手術後1カ月程度から現れます。

Rezumのデリバリーデバイスとジェネレーターです

​治療の仕組み

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デリバリーデバイス先端部から、103℃の水蒸気が前立腺内に9秒間放出され、対流熱によって前立腺組織を約70℃に加熱することで組織壊死を起こします。治療した領域は比較的早期に吸収され、その後肥大した前立腺組織が徐々に退縮して尿道の圧迫が軽減される治療です。

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デリバリーデバイスから水蒸気が噴霧されています

① 麻酔後にデリバリーデバイスを尿道に挿入します 

② 前立腺にニードルを穿刺し、9秒間加熱された水蒸気を放出します。

③ 加熱された前立腺組織は壊死して退縮します。

​治療の流れ

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外来診療で、前立腺肥大症の状態(超音波検査、国際前立腺スコア、尿流量測定など)や全身状態を把握し、経尿道的水蒸気治療に適しているか判断します。 軟性膀胱鏡で尿道の様子を直接観察することもあります。治療の適応と判断された場合、手術予定日を決定します。
麻酔は全身麻酔、腰椎麻酔または局所麻酔でも可能ですが、当院は麻酔科医の管理下での手術ですので患者さんの負担や安全性などを総合的に勘案し、静脈麻酔で行っています。
基本1~2泊の入院としていますが、希望がある場合には外来手術として行います。手術は3~10分程度で終了します。主に前立腺の大きさ、出血の状態で施術時間が変わります。
治療後は、一時的な前立腺のむくみが生じるため、3~7日程度の尿道カテーテルの留置が必要です。したがって尿道カテーテルは退院後の外来再診時に抜去します。排尿状態の改善は多くの場合、術後1カ月以降にみられます。

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前立腺にニードルを穿刺し、水蒸気を放出している様子です

​治療の適応

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前立腺肥大症による排尿症状があり、薬物療法で充分な効果が得られない場合、または尿閉や尿路感染などの合併症がある場合に手術療法の適用が考慮されます。複数ある手術法の中で、Rezum(レジューム)は体への侵襲が低いため、従来の手術療法(TUR-P、HoLEP、PVPなど)が全身状態から手術侵襲を考慮すると困難な方に適用されます(日本泌尿器科学会;経尿道的水蒸気治療に関する適正使用指針)。治療する前立腺のサイズは30~80mLの大きさが適当とされています。抗血栓薬、抗血小板薬の中止は必須ではありませんが、休薬しないで手術を行う場合は出血に注意する必要があります。

​治療による有害事象(合併症)

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主な有害事象(合併症)として、血尿、尿閉、尿路感染、疼痛などがあります。また術後3~7日は留置されたカテーテルの痛みを感じる場合があります。これらのほとんどは術後早期に発生し、軽微なものであることがほとんどです。
またこの治療は、他の手術手技と比較して性機能への影響が少ないとされていますが、術前の性機能が完全に維持されるかは個人差があると考えてください。
前述しましたが、手術の効果が出るまでに約1カ月以上を要する治療であることの理解も必要です。

​現在までの治療成績

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短時間で終了する低侵襲手術ながら、良好な治療成績が示されています。海外での臨床試験成績(5年)では、術前に比べて排尿スコアの改善(国際前立腺スコア;48%, QOLスコア; 45%)がみられ、尿勢に関しても最大尿流量率が44%改善しています。また、再手術率も4.4%と低率になっています。
当院では2022年10月より開始し、現在までに52例行いました(2023年10月末)。これまでの経験では、グラフのような排尿状態の改善が自覚症状・他覚症状ともにみられています。
排尿状態の症状スコアとそのQOLスコアは、術後1カ月目から大きく改善しています。
尿勢の検査と残尿の検査でも、術後1カ月目には改善がみられます。

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前立腺肥大症手術には複数の方法があり、当院にはレーザーを使用するHoLEPや、経尿道的前立腺切除術TUR-Pがあります。
このRezum(レジューム)を用いた前立腺の水蒸気治療をご希望の方は外来受診のうえ、医師と他の手術法を含めた治療選択の検討が必要になりますのでご相談ください。

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​監修者プロフィール

副院長・診療科長・教授

森田 將

​もりた まさし

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