女性の尿失禁
当科では女性の腹圧性尿失禁に対して薬の内服による治療の他に、TOT、TVTとよばれるテープを使用した手術療法を行っています。
失禁とは?
尿失禁とは、思いがけず尿が漏れてしまうことを指します。その病態の違いから
①腹圧性尿失禁(お腹に力がかかると漏れる)と、
②切迫性尿失禁(トイレに間に合わず漏れる)に分けられます。
①腹圧性尿失禁は、運動や立ち上がり動作、咳、くしゃみの際に尿道の閉まる力が膀胱の圧力より低いことで生じ、出産による骨盤の筋肉の緩みや肥満などが原因に挙げられます。他にも、放射線照射や慢性膀胱炎による膀胱壁の線維化が原因となることもあります。
②切迫性尿失禁は急な尿意に対して我慢できずに尿が漏れることで、不随意に膀胱が収縮することによって起こります。神経の活動亢進が原因で、神経疾患以外にも、膀胱結石や膀胱腫瘍などでも起こることがあります。
パッドテストという、パッドに漏れた尿の重量を測定していただき重症度を判断します。また、既往歴に尿失禁を引き起こす原因がないかお聞きします。必要に応じてチェーンCUGと呼ばれる造影剤と細いチェーンを用いたレントゲン検査を行い、尿道と膀胱の解剖学的関係を観察します。この検査は10分程度です。
尿道から膀胱に細いビーズ状の
チェーンを入れてレントゲン撮影をし
膀胱と尿道の角度などを確認します。
10分程度の検査です。
1. 腹圧性尿失禁
治療薬として保険適応があるのはスピロペントという薬のみです。軽症〜中等症のかたにはこの内服と骨盤底筋体操、生活指導で改善があるかみます。 中等度〜重症のかたには、TOT手術・TVT手術という、会陰部から行うプロリン製テープを用いて尿道中部を支える手術を行いますが、重症度によって治療法を分けています。
2.切迫性尿失禁・過活動膀胱
切迫性尿失禁・過活動膀胱は薬物治療が中心になります。主にβ-3作動薬、抗コリン薬という薬剤が治療薬として保険承認されています。緑内障の有無、口渇や便秘、尿閉といった副作用に注意しながら使い分けます。
しかし、これらの治療薬を使用しても、治療薬自体の副作用が強く出るために内服が困難だったり、または治療薬を一定期間内服しても症状の緩和がみられない場合(難治性過活動膀胱)があります。
当院では、難治性過活動膀胱のかたに、ボトックス膀胱壁内注入療法を積極的に行っています。ボトックス(A型ボツリヌス菌)は、顔の小皺の形成手術等でよく利用されており安全性の高いものです。この膀胱内注入療法は2020年より保険適用されており、局所麻酔、膀胱鏡下に専用の針を使用して20か所程度注射しますが、外来手術として行えます。効果の持続期間は約半年間です。
当院は臨床治験から使用を開始し多くの症例経験があります。
難治性過活動膀胱でお困りのかたはお気軽にご相談ください。
TOT、TVT手術に用いるテープです。
尿道から膀胱に内視鏡を挿入して
膀胱壁にボトックスを後壁中心に
約20か所少量ずつ注入していきます。
20分程度で終わります。