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尿路結石

当院では結石治療にかかわる内視鏡機器を各種取り揃えています。腎結石から膀胱尿道結石まで、すべての尿路結石に関して、結石の位置や大きさによって手術法を選択し対応しています。体外衝撃波の結石破砕は現在行っておらず、昭和大学病院または近隣施設をご紹介いたします。

尿路結石の患者さんは、男性が女性の約2.5倍多いとされ、年々増加傾向にあり、原因として生活習慣病との関連がいわれています。結石が尿路に詰まると、強い痛み(背中や腹部)が急に起こります。他にも吐き気や冷や汗をともない、血尿や頻尿、残尿感を感じることもあります。痛みのために来院するかたが多い一方で、結石が腎臓や膀胱の中にあって尿路に詰まらない場合には症状がなく、検診や他の病気での通院中に偶然に発見される場合もあります。治療は基本的に、結石の大きさと部位により、薬を服用しながら自然に尿中に結石が排出されるのを待つか、自然排石が期待できない結石の場合には手術療法の適応となります。また、結石は時に重篤な尿路の感染症をおこしたり、尿の尿路外への漏れを引き起こしたり、両側の尿管結石が詰まってしまい腎不全をおこすなどで緊急処置(尿管へのステントチューブ留置など)を要することもあります。

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多くの場合、腎臓の中(腎盂)で

発生した結石は尿管内へ落下し

疝痛発作を引き起こします

腎盂の中にある結石は、無症状で気がつかず長い期間経過することがあります​。

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​経尿道的に腎盂から膀胱へ開通するチューブ(尿管ステント)を挿入します。

痛みのある尿路結石の約70%は、薬の服用と生活指導により尿中に自然に排石され、残りの30%に手術的な治療が行われています。結石の再発する頻度は5年間で約50%とされており、再発回数は2回以上が約50%とされています。
結石の発生する原因は、それぞれの結石の成分によります。たとえば一番頻度の高いカルシウムを含む結石は、シュウ酸カルシウムという物質が過飽和となり、結晶が成長と凝集を繰り返して作られます。また高尿酸尿などは結石形成に促進的にはたらき、クエン酸などは抑制的に働くとされています。

結石は右の図のように、尿路(腎臓から尿道までの尿の通り道)で部分的に結石が通過しにくいとされる尿管のもともと狭い場所が3か所あります(生理的狭窄部といいます)。これらの部分に結石が到達すると詰まりやすいので痛みの発作が起こりやすくなります。

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背中やわき腹の急に発生する激しい痛み、吐き気、冷や汗、血尿、頻尿、残尿感などがあります。

  1. 結石の痛みの発作は、主には結石の詰まりによる尿の流れの阻害が、急速な腎盂(腎臓の内部の部屋)の圧力上昇をもたらすことで起こります。したがって、結石に対して周囲の空間的余裕がある腎盂結石などの場合には、結石があっても無症状のことがあります。

  2. 結石が膀胱の近くまで落ちてくると、頻尿や残尿感などの刺激症状を感じることがあります。結石が膀胱内に落下すれば、膀胱内部は結石に対して空間が十分に大きいので痛みは軽快します。尿道(膀胱からペニスの先まで)は尿の勢いにより通常は容易に通過し結石は体外へ尿と一緒に排出されますが、もともと尿道が狭いかたや、前立腺肥大のあるかた、または大きな結石の場合には尿道内にも結石が詰まることがあり、血尿が出たり、尿が途切れたり、あるいは尿が全く出なくなることがあります。

  3. 他に、結石にともなう腎盂腎炎(発熱します)、尿の腎盂外溢流(圧力によってあいた尿路の小さな穴から尿が体内にもれます)、腎後性腎不全、尿道結石の詰まりで尿閉が発生したりすることがあり、この場合、上述したようなステントの挿入などの緊急処置を要することがあります。

急に背中や腹部が痛くなり来院された場合には、まず他の腹痛を起こす病気ではないかどうかの診断と、その後に痛み止めなどの症状に合わせた処置が必要になります。症状がなく、検診などで偶然に結石が見つかり受診された方は画像診断を予約し、治療が必要な結石かどうか評価していきます。

以下、一般的に行う検査と処置について記載します。

●尿検査、エコー検査、レントゲン、採血を行います。さらにCTで細かく評価します。

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結石の表面は細かくみるとギザギザしていることが多く、そのため見た目に血尿に気づかなくても、顕微鏡でみると出血が見られることが多いです。そのため尿検査を行います。エコー検査は、痛みの原因となっている結石の詰まりによって生じた腎臓の腫れの有無を簡便に観察できます。レントゲンは、カルシウムを多く含む結石であればレントゲンに白く写るので結石の部位と大きさ、位置が推定できます。しかし、一部の結石はレントゲンに写りませんし、体のなかには結石に間違いやすい石灰化がみられることがよくあります。そのため、通常CTスキャンを行います。CTスキャンでは、結石の有無と位置、大きさがわかり、さらに痛みが他の病気によるものではないことの確認の手助けにもなります。また採血は、炎症の存在や、肝臓や胆嚢などの腹痛を起こす臓器の問題がないかをみるのに有用です。

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約5mmの尿管結石があり、腎盂腎杯の腫れ(水腎症といいます)を認めるエコー検査画像です。

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レントゲン写真です。カルシウムを含む結石の場合には骨と同じように白く写ります(矢印)。

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左側のレントゲン写真では結石ははっきりと指摘できませんが、CTをとると結石がはっきりとわかります(矢印)。
CTでは、小結石を見落とすこともほとんどありません。水腎症
もCTでわかります。

基本的には尿路結石症診療ガイドラインにしたがった治療を行います。治療は大きく、薬の服用と生活指導による保存的治療と、手術による積極的治療に分かれます。積極的治療の内容は、基本的に結石の大きさと部位によって決められますが、それぞれ利点・欠点をもった治療手技がまたがって存在しており、手技については担当医とよく相談してください。

1.保存的治療

結石の大きさが10mm以下の結石は自然排石が期待できるとされているので、まずは保存的治療をします。このサイズの尿管結石は約70%が保存的治療で自然排石するとされています。しかし、サイズはあくまで目安であり、実際には、長径7~8mm、短径5~6mm以上のものは自然排石しにくいようです。また、結石のサイズが小さめでも他の要因によって積極的治療に移行することがあります。

  • 1日2L以上の水分摂取(利尿効果による排石促進を期待)。

  • 縄跳び、階段昇降などの適度な運動(重力運動による排石促進を期待)。

  • 薬は尿管の攣縮抑制、利尿作用のあるものを服用します。ただし、これらは排石促進効果を期待したもので、結石を直接的に溶かす作用はありません。痛みの発作には、内服の鎮痛剤の他に、頓用で座薬の鎮痛薬を使用します。

2.積極的治療

結石が保存的治療の適応サイズより大きい場合や、他の原因で自然排石が期待できないものが積極的治療の適応です。例えば

  • 3~4ケ月の保存的治療で排石しない尿管結石

  • 尿管結石の同じ場所への長期の詰まり

  • 緊急処置の必要な結石の合併症が発生した場合

  • 抗生物質のきかない著しい尿路感染症が合併した場合

  • 結石によって腎機能が悪化した場合

  • 痛みの発作で社会生活に影響が出る、職業上(パイロットなど)早めの結石除去が望ましい場合

などです。

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結石手術には以下のようなものがあります。

  1. 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

  2. 経尿道的尿管砕石術(TUL、f-TUL)

  3. 経皮的腎砕石術(PNL)

  4. 経尿道的膀胱砕石術

  5. 開放手術(ほとんど行いません)

1~3についてご説明します。

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結石を衝撃波で

破砕します。(ESWL)

​※当院では行って

  いません。

大きな腎結石は

腎瘻から内視鏡を挿入し砕石器で破砕します。

​(PNL)

尿管結石は尿道から

長く細い内視鏡を挿入し

レーザーで破砕します。

​(TUL)

1;体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

上部の尿路結石のかたに、負担の少ない治療としてよく行われ外来での治療が可能です。レントゲン透視または超音波を使って結石を観察しながら衝撃波(音波の一種)を結石に集中させて砕きます。人体と結石の音響インピーダンスの差を利用しています。
原則的に腎・尿管結石のすべてが適応になりえますが、腎臓の結石の場合には1~2cm、尿管結石の場合は5mm以上が良い適応です。5mm未満の尿管結石でも社会的適応で行うこともあります。
響くような痛みを伴うため、手術中は点滴で痛み止めを使います。痛みの感じ方には個人差があります。外来通院で行い、治療時間は約1~2時間、結石の破砕が容易に終われば早く終了します。しかし、結石が硬い場合には期待通りには結石が割れないことがあります。また、結石にあくまでヒビを入れて割るのみで、取り除く治療ではありません。そのため、ヒビが入った結石は、その後は自然排石を期待するので、治療後も痛みの発作がくることはあります。
手術による合併症は血尿や皮下出血が多いですが、通常は自然に軽快します。頻度は少ないですが、腎臓の周囲に血腫を生じ、まれに輸血を要することもあります。大きな結石に破砕を行った場合には、割れた結石のかけらが多量で尿管に連なって大きな詰まりを起こすことがあります(ストーンストリートとよばれています)。この場合、一時的に尿管ステントを留置する処置などが必要になり、その後は再度体外衝撃波を行ったり、内視鏡手術をすることになることがあります。
日本では、侵襲の小さい体外衝撃波の治療が欧米に比べて多く行われています。しかし、結石が治療によりなくなるかどうか、ということに重点を置くと、必ずしも理想的な治療かどうか議論のあるところです。内視鏡手術の技術向上は著しく、日本でも施設によっては後述する内視鏡手術を中心に行っています。当院では、体外衝撃波をご希望の場合には関連の昭和大学病院または近隣施設をご紹介しています。

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体外衝撃波結石破砕機器(Dornier社製)

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2;経尿道的尿管砕石術(TUL, f-TUL)

内視鏡手術で、全身麻酔でおこなっています。尿道から細くて長い尿管鏡という内視鏡を使って、尿管内へアプローチし、レーザーやリソクラストという砕石器を使って結石をテレビモニターで見ながら砕きます。砕いた結石はバスケットなどの器具で取り除きます。内視鏡には鉄製のもの(硬性尿管鏡といいます)と、ファイバー製(軟性尿管鏡といいます)のものがあり、軟性尿管鏡は先端が大きく曲がるので腎臓の中の結石の治療もおこなうことができます。
当院では、5-6日の入院となります。

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軟性尿管鏡(Olympus社製)(左)と硬性尿管鏡(Wolf社製製)(右)。

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軟性尿管鏡でレーザーで結石を砕いたあと、バスケットで結石を取り除いています。
内視鏡先端から出たバスケットが結石を把持する様子(右)。

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軟性尿管鏡で腎臓の中の結石を砕いています。高画質化されているので、内視鏡は細くても良い視野が得られるようになりました(左)。
レーザー本体(Boston社製)(右)。

PNL

3;経皮的腎砕石術(PNL)

腎臓の中の大きな結石に対して、腎瘻という背中から直接腎臓に到達する通り道を作り、そのボールペンの太さ程度の小さな穴から内視鏡を腎臓内に入れて、テレビモニターを見ながら結石を割り、摘出します。全身麻酔で行います。腎瘻を作ることにより出血しやすく、大きな合併症が起こることもまれにありますが、大きな腎結石には体外衝撃波治療では限界があり、有効な治療法です。適応は腎臓の部屋の形になってしまったようなサンゴ状の結石や、20mm以上の腎結石、複数の腎結石に行っています。手術時間は1〜2時間程度で、手術終了時には腎臓にカテーテルを留置する事が多く、これを約3〜7日後に抜去するので、入院期間は約7〜10日ほど必要になります。

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PNLの様子。腎臓の部屋にはまった大きな結石(40mm)をリソクラストを使用して砕き、鉗子で摘出しています。

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腎臓用の内視鏡(硬性腎盂鏡(Storz社製)(左)とリソクラストのという砕石器です(EMS社製)(右)。

当院では、腎臓、尿管結石のPNL手術およびTUL手術を数多く経験しております。

ご希望のかたは、担当医によくご相談ください。

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